朝鮮後期、見どころ満載の豊穣の都・漢陽(ハニャン、現在のソウル)の風景を写実的にハングルで表現した歌がつくられました。1844年に漢山居士が書いた『漢陽歌』には、王の空間である宮殿、官衙が立ち並ぶ六曹通り、国内外の品々があふれる賑やかな市場のほか、下級官吏である別監たちが楽士の演奏や妓生の舞を楽しむ「スンジョンノルム(承伝遊び)」や御陵に向かう王の行幸、宮殿で行われた科挙試験の風景が描かれています。そこには、漢陽に対する愛情や誇り、太平の世と国の繁栄を願う気持ちがよく表れていて、当時の人々にとって漢陽を理解するための素晴らしいヒントとなりました。
本展は、初めて『漢陽歌』を「韓国の言葉」という視点から紹介する企画特別展です。『漢陽歌』に描かれた朝鮮後期の漢陽の各所をリアルに体感できるように会場を設営してあり、また、歌の中の物語に耳を傾けてもらえるように演出しています。さらに、歌に出てくるさまざまな職業名やモノの名前なども紹介していて、これらの言葉からも当時の暮らしや文化に触れていただけるでしょう。
朝鮮時代につくられたハングルの歌を通して漢陽の輝かしい瞬間に出会い、現代の韓国語で綴る新たなソウルの姿を思い描いていただければ幸いです。